今月の花(九月) 冬瓜
夏から秋に生るウリ科の冬瓜を冬と書くのは、涼しいところに置いておくと冬までもつからだといわれます。実は2キロから大きなものは10キロ近くになります。花は黄色で雄花と雌花があり、雄蕊は雄花に5本、雌蕊は雌花に1本。人口授粉で実をつけさせます。
濃い緑の皮をむいたあとの白い実は火を通すとやや透けたようになり、そして食感にも軽さがでて口あたりもよく、晩夏からの楽しみの食材です。
若いころ中国料理のクラスに通ったことがあります。先生のお知り合いやご親戚のお嬢さんたちと一緒に、先生のお宅でのお稽古でした。お年を召したお母さまが椅子にピンと背を伸ばして座って微笑みながら見ておいででした。一家は北京に暮らしておいでだったようでその上品なお母さまの雰囲気は、ご夫君が中国の名士の顧問をしておいでだったと伺っていましたが、その名を後で知り、なるほどと思いました。
ただの食いしん坊だった私にとって、一番印象深かったのは冬瓜を使ったお料理でした。まず、へたのところからを1センチほどを切り落とし蓋にします。中のわたをすくいとり、皮はぐるぐるとむきます。それを茹でた後、海老やハム、鶏ひき肉の入ったスープを入れて蒸します。蒸しあがったら少し残しておいたスープに片栗粉をいれてとろりとさせ上からかけます。切り取っておいた蓋は細工をして、本体のへりに入れた切れ込みにかみ合わせるようにします。
教室では、「はい、いたしましょう!」と母上が立ち上がり小さなナイフで緑の蓋に細工をします。その細工の菊の花のような美しさに歓声があがりました。蒸し上がると各々が中身を皿にとり、その後主がナイフでヘリを切って実を中に落とし、中身と混ぜて取り分けます。だんだん落としていき最後に底だけ残ります。
先生と母上とが優雅に取り分けてくださったその仕草がまだ目にうかびます。
中国出身の知人は、母方のお祖母様からこのお料理を作ってもらったとのこと。また、父方のお祖母様の冬瓜料理は春雨と冬瓜の煮物、そして干しエビの冬瓜スープ。私の作った冬瓜の丸蒸しは「冬瓜盅(とうがんちゅう)」または「佛跳墻」と書き広東料理だそうです。
野菜や果物もいけばなの花材として使いますが、冬瓜に関してはまだ作品にはしていません。お料理としての冬瓜の印象が強く、当分いけることはないと思います。(光加)